コラム&ちょっぴり論文紹介

アスリート×ヨガ

 私がアメリカに住んでいた2000年ごろ、当時フルマラソン完走に向けてのLSDトレーニングをしていた私は、関節痛や長引く筋肉痛に悩んでいました。通っていたジムでトレーナーに相談したところ間髪入れずに「完走したければ絶対にヨガをしたほうがいいよ」と勧められ、その言葉を信じて受けたPowerYoga クラス。昔から勉強よりもスポーツが得意でいろいろな競技をそれなりにまぁまぁのレベルで頑張ってきた私は、ヨガなんてストレッチを丁寧にするくらいのものだろう、と思って軽い気持ちで(というよりむしろ、半ば馬鹿にした気持ちで)参加しました。ところが、全く私が思っていたようなものではなく、筋トレと有酸素運動をミックスしたようなかなりハードなプログラムで驚いたことをいまだに覚えています。その後すっかりヨガにはまった私は週に2~3回はヨガクラスに参加し、それ以外も家でDVDを見ながら練習を続け約半年後に、無事にどこの故障もなく初めての国際マラソンを予想以上のタイムで完走したのです。その当時、アメリカではすでにNFLやNBAの選手たちが個人もしくはチームでヨガに取り組んでいる光景もテレビなどで流れていましたし、ヨガはアスリートに良いのだろうとは思っていましたが、自分の身をもって体験し、確信に変わりました。

 2020年の今、世界的に有名な、各国を代表するようなアスリートたちがヨガをトレーニングに組み込み、怪我の予防&リカバリー、メンタルの調整などパフォーマンスアップを目指しています。多くの実践があるにも関わらす、実は今現在PubMedで「yoga」&「athletes」で論文を検索しても、実際にアスリートに対するヨガの効果を検証した研究は数えるほどしかヒットしません。医学・疫学分野でヨガの研究はとても多いのですが(私が博士課程在籍中の研究テーマはがんサバイバーに対するヨガの効果でした)、アスリートに対するヨガの研究は当時からあまり増えていないように思います。日々決戦のアスリートは純粋にヨガだけをピックアップしてトレーニングを行うことは困難で、ゆえにヨガの効果検証を行うことは難しいのが理由かもしれません。しかし、一般の人よりも自分のからだの感覚が鋭いトップアスリートがヨガを実践するのですから、ひょっとしたら実験室内で行われる効果検証の研究よりもずっと強いエビデンスだと言えるかもしれません。

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